カーボンニュートラルへの歩み
次世代へつながる
常石グループ脱炭素ロードマップ

 世界的に脱炭素化が進む中、多角的に事業を手がける常石グループはさらなる飛躍への転換期を迎えています。その布石となる「CO₂排出量の削減」について、まずはグループ内企業の中でも排出量が多い造船、海運、環境事業に目を向ける必要があります。特に、主力商品である船舶は人々の暮らしを支えるインフラである一方、造られてから解体されるまでの長期にわたって多くの化石燃料を消費します。我々がこの課題にどう向き合うか、その姿勢こそが顧客である船主や荷主の判断材料となるのです。
 顧客と共に歩む常石グループでは、求められる期待を確実に捉え、選ばれ続ける企業となるために、自社の役割を認識した上で脱炭素社会実現に向けて着実に取り組みます。

脱炭素化推進のための学びと組織づくり

 2020年末に、日本政府は「カーボンニュートラル宣言」を行いました。常石グループ内では、翌年すぐに社内研究会を結成。脱炭素の重要性について理解を深め、2022年からはツネイシホールディングスにサステナビリティ推進グループを設置しました。ここから、グループ企業の垣根を越えた本格的な活動が始まったのです。

 常石グループでは、サステナビリティの取り組みを推進する「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ推進基本方針の策定、TCFD賛同表明、CO₂排出量削減目標などについて審議・決定してきました。同時に、サステナビリティ委員会で議論された方針や目標値などについて、各事業会社が設置する「サステナビリティ推進会議」で詳細な議論を各社の業態に合わせた施策を立案・実行、グループ全体の推進を図っています。

常石グループCO₂排出量削減目標ロードマップ

 常石グループは長期的な2050年までのCO₂排出量削減目標を明示するとともに、2019年を基準とした2030年・2040年のマイルストーン目標の達成に向けて取り組みます。

グループ全体CO2排出量削減目標
(カーボンオフセット含まない自社努力)

※上記目標は既存事業所においての操業度変化も織り込み、絶対量として設定しております。ただし、新たに事業所を設けた場合等は適宜検討してまいります。

2050年に目指す姿

スコープ1+2削減目標

スコープ3削減目標

 排出量削減のための重要な第一歩が各企業のCO₂排出量の可視化です。常石グループでは排出量算定に対する「第三者認証」を取得。専業造船の中では初めてとなる認証によってグループの今を示す排出量の透明性はさらに高まり、解像度の高い着実な取り組みができる土台づくりにつなげています。

 専門性を持つ第三者機関が企業や団体の持続可能な取り組みを評価。国際規格を満たしている場合に「第三者認証」が付与され、情報の信頼性が認められます。認証の有無が社内の脱炭素活動を促進するだけでなく、今後は外部のステークホルダーや格付機関からの評価ポイントとしても期待できることから、事業成長に向けて大きなメリットを持つ認証と言えます。

グループにおける代表的な削減取り組み

 排出量を元に、各企業が厳しい基準を設定。その中でも脱炭素化に大きく貢献できる3セグメント(造船事業、海運事業、環境事業)の施策について紹介します。


【造船事業】発注が進むメタノール二元燃料船

 常石造船では、2023年1月に日本の造船所として初めてメタノール二元燃料船を開発し、市場に投入しました。環境負荷の低い燃料で運航できるだけでなく、従来船型と比べ燃費性能も大幅に向上させたことにより、環境性能と経済性を両立した船舶として海運・造船業界では耳目を集めており、これまでに約30隻を超える受注を頂けています。

メタノール燃料ばら積み貨物船KAMSARMAX AEROLINE
メタノール燃料焚き5,900TEU型コンテナ運搬船

省エネ技術の研究開発

燃費向上に関する技術・ノウハウに磨きをかけ、お客様満足度の高い技術開発を継続します。

プロペラ前方にフィンを取り付け、プロペラ回転流によるエネルギー損失を回収できる省エネ装置。
常石造船の船型に最適化された独自設計のプロペラ。
燃費改善・騒音低減効果。
船外から空気を直接取り入れ、エンジンの燃焼効率を向上する給気構造物。
独特な流線型船首と居住区の組み合わせで風圧抵抗低減。

造船事業 取り組みのご紹介

【海運事業】効率的かつ環境への最適解となる運航を目指す

 外航海運事業では、スケジュール遵守に加えて環境にも配慮した燃料消費効率の良い運航を実現。内航タグボート事業も同様に、高い燃費効率で環境に配慮した航行を実践します。

■地方港直結の物流サービス

国内主要港を経由する国際貨物は陸上輸送過程における環境負荷が高く、また輸送車両運転者の確保が困難になってきています。中国主要港と日本の地方港湾をダイレクトに結ぶサービスにより、地方に生産・流通拠点を有する顧客のサプライチェーンの効率化だけでなく、気候の温暖化に対する課題解決への有効なアプローチを提供します。

環境へ配慮した最新鋭船の導入、オペレーション・サービス

主な内地地方港入港にあたっての最適船型である1,000+TEU型にて運航しています。同時に、社船はグループの常石造船株式会社と協業し適宜、環境排出規制を先取りした最新鋭船舶を導入し環境負荷の低減を図っていきます。また、船舶運航管理の実務部隊を上海に設置し、本社で船舶情報を統括、国境をまたぐ本船のオペレーションを管理。国内3か所、中国7か所にコンテナ営業にかかわる自社拠点を展開する他、国内外に多数のローカルパートナーを有し、各地域のお客様をグローバルにサポートしています。


【環境事業】廃棄物をリサイクルし、埋め立て処分ゼロを目指す

 多種多様な廃棄物の安定化・無害化処理に加えて、最終処分場への埋め立てゼロを目指し、リサイクルも積極的に推進しています。「持続可能な社会の実現に必要不可欠な存在になる」というビジョンを掲げ、廃棄物の新たな価値を創造します。

循環型社会の構築

廃棄物を原材料としたリサイクル製品の開発・販売に取り組んでいます。
今後は太陽光パネル、バッテリーなどの新たなリサイクル技術の研究開発を強化し、循環型社会の構築を目指していきます。

培ってきたリサイクル技術

溶融スラグ(品名:メリッサ)

再生レンガ

固形物の焼却後に発生する焼却灰や焼却飛灰、外部からの燃え殻、飛灰、汚染土壌を溶融処理で無害化。
土木・建築資材として活用。

人工砂
(品名:アークサンド)

高い吸水率と調湿性を備え、路盤材や雑草抑制資材として活用。
RPF(※)

廃プラスチック、木くず等を原料とした高カロリー固形燃料。※Refuse Paper & Plastic Fuel
肥料

下水汚泥など有機性廃棄物を発酵させ肥料を製造、販売。
再生油

船舶廃油をリサイクル処理し再生油を製造、販売。

今後の取り組み

太陽光パネルリサイクル

太陽光パネルは、処理の難しさとコストが危惧されている。将来の大量廃棄に向けて、リサイクルプロセスを検討中。
バッテリーリサイクル

ノートパソコン、家電製品、自動車などのリチウムイオンバッテリーの回収をマレーシアで実施。東南アジアにおけるバッテリーリサイクルの展開を目指す。