常石グループ

2025.12.24

地球環境に優しい
持続可能な海上輸送への挑戦

迫りくる脱炭素化の波と
海事産業の責務

今、世界は地球温暖化という大きな課題に直面しており、その主要因とされる温室効果ガス(GHG *¹)の排出量削減は、あらゆる産業にとって避けて通れない社会的責務となっています。

 

海運は、国際貿易において一度に大量の貨物を輸送できるため、他の輸送手段と比較してCO₂排出量が少なく、環境負荷の低い輸送手段と考えられています。しかし、増加する世界貿易量に伴い、国際海運からの総排出量も増加しています。

 

船を「造る」造船事業と、船を「運航する」海運事業の二つを擁する常石グループは、持続可能な地球環境を次世代へ引き継ぐという社会的責務のもと、独自のグループ体制を活かして両事業を密接に連携させています。これにより、実運用における経済性を維持しつつ、脱炭素化を含む環境負荷の低減をいち早く実現する体制を整え、この課題解決に挑戦し続けています。

 

*¹ GHG:Greenhouse Gas

次世代燃料船開発の最前線
環境配慮船の製造

新造船のCO₂排出量を指標化するEEDI *²(エネルギー効率設計指標)において、常石造船は2025年以降の規制である「EEDIフェーズ3」を前倒しでクリアし、環境負荷の低減と燃費向上を実現してきました。

 

長きにわたり培ってきた船造りの知見とノウハウの積み重ねを活かし、常石グループはカーボンニュートラルの実現を目指します。その実現に向けて、引き続き既存技術のさらなる磨き上げを行うとともに、新燃料船の建造・運航を両事業一体となって進めてまいります。

 

これまでに、自社完全内製化を実現したタンクを搭載したLPG(液化石油ガス)運搬船や、LNG(液化天然ガス)専焼の石灰石運搬船を開発してきました。このLNG専焼船は、ハイブリッド推進システムを搭載し、従来の重油燃料船と比較してCO₂排出量を約24%削減し、出入港時にはゼロ・エミッション運転を可能としています。

 

2025年3月には国内初の水素燃料タグボートを進水、同年10月に引渡しました。高出力の水素混焼エンジンを搭載し、従来の化石燃料船と比べ約60%のCO₂排出削減を実現するほか、船体の全鋼板にGXスチール「JGreeX *³」を採用し、鋼板起因のGHG排出量削減にも貢献しています。

 

同年5月には、世界初のメタノール・重油の二元燃料焚き載貨重量6万5,700トン型ばら積み貨物船「TESS66 AEROLINE」を引渡しました。グリーンメタノールを使用することでカーボンニュートラルを促進し、従来の燃料と比較してCO₂排出量を最大10%、NOxを最大80%、SOxを最大99%削減します。

 

*² EEDI:Energy Efficiency Design Index
*³ JGreeX:JFEスチールの GHG 排出削減技術により創出した削減量を任意の鋼材に割り当てることで、鉄鋼製造プロセスにおける GHG 排出量を大幅に削減した鉄鋼製品。

出入港時にゼロ・エミッション運転を可能とするLNG専焼石灰石運搬船「下北丸」。LNG燃料システム及びリチウムイオンバッテリのハイブリッドシステムを搭載

国内初となる水素燃料タグボート。高出力の水素混焼エンジン、大容量の高圧水素ガス貯蔵および供給システムを搭載

ばら積み貨物船の“ウルトラマックス”カテゴリー最大級の載貨重量を誇る常石造船の新鋭船型、世界初のメタノール二元燃料ウルトラマックス

グループシナジーによる
環境に配慮した輸送システムの実現

常石グループの最大の特長であり、この環境課題解決への挑戦を加速させる鍵となるのが、造船と海運、両事業の強力な連携です。

 

造船部門で生み出された最新鋭の環境対応船は、グループ内の海運部門が積極的に導入・運用することで、技術の早期実用化と検証が可能となります。海運事業による実際の航海環境下で得られるフィードバックは、製品のブラッシュアップや新技術の最適化に活用されています。

 

この「造船が開発し、海運が実運用で磨き上げる」という一貫した仕組みは、グループ全体のGHG排出量削減をスピーディーに実現するだけでなく、外部の顧客に対しても、実証済みの高い環境性能と経済性の両立を実現した船舶を提供できるという大きな価値と信頼に繋がります。

未来の海上輸送への
コミットメント

常石グループは、造船と海運の強固なグループシナジーを最大限に活用し、技術革新を通じて地球環境に負荷をかけない物流を実現する責任を果たしていきます。今後も多岐にわたる次世代燃料船の開発を推進し、持続可能な海上輸送の未来を築き、海事産業の変革に貢献してまいります。