常石グループ 2023年度 連結業績報告
ツネイシホールディングス株式会社(本社:広島県福山市沼隈町常石1083番地、代表取締役社長:神原宏達 以下、ツネイシホールディングス)の2023年度(2023.1.1~2023.12.31)の連結売上高は、3,153億円(前年度比22%増)となりました。
当事業年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症からの回復が見られた一方で、長期化する紛争などの影響を受けて、エネルギー価格の高騰と資源高による物価上昇に直面し、依然として不確実な様相を呈しています。
このような状況下、当社主要子会社が属する造船海運業界では、年後半から海運市況が下落基調となり、加えて中国経済の成長鈍化を背景に、コンテナ輸送量は前年比でマイナスとなりました。しかしながら、自動車産業を中心とした長期固定傭船などにおいては、コロナ禍収束に伴う挽回需要が押し上げ要因となり、海運事業は前年度比で安定した売上を計上しました。また、新造船に関しては、世界初の「メタノール燃料ばら積み貨物船KAMSARMAX AEROLINE」の受注を皮切りに、地球環境への負荷低減に貢献する船舶として旺盛な引き合いを受け、メタノール二元燃料船は約30隻と大きく受注数を伸ばしました。
事業別売上高は、造船事業が2,362億円(前年度比24%増)、海運事業が661億円(前年度比6%増)、エネルギー事業が124億円(前年度比2%減)、環境事業が216億円(前年度比36%増)、ライフ&リゾート事業が52億円(前年度比10%増)となっています。
(※注 いずれも内部取引の相殺前)
常石グループは社会環境が激変する中にあって、安定した事業基盤を確立することを重要な経営課題と捉え、市況変動に耐性のある企業グループへと転換してまいります。さらに持続的成長の原動力として、「Green」、「Digital」、「Human Resource」の3要素を経営方針の中心に位置付け、戦略的な投資を通じて成長を促進するとともに、変化に適応し続けることで競争力を獲得し、社会課題を企業価値に変えてまいります。
■常石グループ 2023年度 連結売上高
<決算情報>
・決算期:1月~12月
・連結対象:ツネイシホールディングス株式会社を含む43社(国内23社、海外20社)
造船事業
■2023年度 概況
常石造船は2035年以降の建造船を全て二元燃料(Dual Fuel)船とすること、及び2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言した「常石造船CO2排出量削減ロードマップ」を公開しました。*1 これは、7月に正式な目標が決定された国際海運のGHG(温室効果ガス)削減に先駆けて策定しています。常石造船では、ゼロエミッション船の実現に向け日々研究開発を行っており、年初には世界初「メタノール燃料ばら積み貨物船KAMSARMAX AEROLINE」の受注に結びつきました。メタノール燃料船はこれを皮切りに、「メタノール燃料ばら積み貨物船TESS66 AEROLINE」や「メタノール燃料5,900TEU型コンテナ運搬船」など合計約30隻を受注しました。
*1 常石造船CO2排出量削減ロードマップ:https://www.youtube.com/watch?v=PUzs8m7-bPk
こうした先鋭的な取り組みが奏功し、本事業年度での受注数は62隻となり、2027年までの工事量を確保するに至りました。また竣工隻数は43隻となり、海外2工場の安定した生産体制による操業が大きく貢献しています。
●売上高:2,362億円(前年実績1,910億円、前年度比24%増)
●建造隻数:43隻(前年実績38隻)
※常石造船株式会社、TSUNEISHI HEAVY INDUSTRIES (CEBU), Inc.、常石集団(舟山)造船有限公司の合計受注隻数:62隻(前年実績35隻)
■今後の展望
常石造船CO2排出量削減ロードマップを実現するため、そして環境対応におけるフロントランナーを目指し、メタノールのみならずLNGやアンモニア、水素など環境負荷の低減と経済性を兼ね備えた新燃料船の開発・建造を推進します。それに備え、2024年にLNGタンクの内製化を行っており、将来の新燃料船の建造と需要の拡大に向けて踏み出しています。
また、外部環境の変化に対するリスク耐性向上と、新燃料船建造では建造期間を要することへの対応を目的に、新たな新造拠点の建設を計画しています。更に、一昨年に立ち上げたseawiseは、データの価値を最大限引き出すことで船舶のライフタイムバリューの向上に役立つオープンプラットフォームであり、複雑化する二元燃料船の保守・運航をデジタルでサポートします。これらの実現により強固な事業基盤を構築してまいります。
昨年11月に策定した新中期経営方針ではESG経営による競争優位の確立を掲げました。常石造船はESG経営の実践と深化を経営の中核に据え、「グリーンテクノロジー」「デジタルイノベーション」「ライフタイムバリューの向上」「人材開発」「新たな領域への挑戦」の切り口で各部門の目標を設定しています。『未来の価値を、いまつくる。』という常石グループスローガンの下、従業員一人ひとりが常石造船のビジョン「期待の先へ、変革を恐れず舵を切る」の実践に取り組んでいきます。
海運事業
■2023年度 概況
不定期船事業では、エネルギー価格の高騰やインフレによる消費行動の様子見により影響が懸念されたものの、下期にインド向け・中国向けの石炭の増加や、ブラジル穀物の荷動きの増加などにより、通年では年初に想定した荷動きにとどまりました。
定期コンテナ船事業では、中国における不動産不況に端を発する個人消費の冷え込みなどが重しとなり、中国からの輸出入が低迷したことを受けて、輸送量が前年度比でマイナスとなりました。
神原汽船は国際的な環境規制に先駆けて、脱炭素やグリーン燃料の搭載へ取り組んでおり、本事業年度では豊田通商株式会社とともに、バイオ燃料を船舶燃料とする実証試験を行いました。加えて、27年竣工のメタノール二元燃料船舶の初傭船契約を締結するなど、様々な角度から取り組みを加速しています。
●売上高:661億円(前年実績623億円、前年度比6%増)
■今後の展望
主事業となる中国の主要港と日本の地方港を直航で結ぶコンテナサービス(日中定期コンテナサービス)が、1994年の開始から30年を迎えます。いわゆる物流の2024年問題は、今後より荷主のニーズに即した事業となる可能性が見込まれます。多くの顧客にご愛顧をいただいたサービスを、これからも日中間の輸送を軸に東南アジア、南アジア、中東へとサービス網を広げ、国際輸送の担い手として地域の活性化と経済の発展に貢献していきます。
また引き続き、海上輸送における脱炭素化へ新燃料船舶の積極的な投入に加えて、船員のなり手不足の課題に向けて、女性船員の登用を進め、将来的に類を見ない女性船員の全乗達成に向けて人材育成を進めてまいります。
環境事業
■2023年度 概況
環境事業業界では、エネルギー価格の高騰、温暖化ガス排出削減など循環型社会の実現に向けた取り組みが活発に進められており、国内での廃棄物の発生量は減少傾向にある中で、ツネイシカムテックスにおいては処理単価の改定などにより売上は堅調に推移しました。また、1月にツネイシCバリューズ株式会社よりカーリサイクル事業の承継をうけ、鉄・非鉄金属リサイクル事業の拡充や、今後の社会課題である太陽光パネル、リチウムイオンバッテリーのリサイクル事業への取り組みも進めています。
加えて、世界的に好調な非鉄金属リサイクル事業を展開しているマレーシアのCycle Trend Industries Sdn.Bhd.を連結対象とすることで、環境事業全体の売上高は増収となりました。
●売上高:216億円
■今後の展望
環境負荷低減を目指す世界の潮流に呼応し、廃棄物のリサイクル率向上によるサーキュラーエコノミーおよびCO₂排出量の削減などを積極的に進めます。
特に、有機フッ素化合物(PFAS)の新規規制や処理困難物への対応など、事業環境の変化に適応できるよう技術開発・設備投資を推進していきます。
「持続可能な社会の実現に必要不可欠な存在になる」のビジョンのもと、環境事業各社の連携をより一層強化し、循環型サプライチェーンの構築を目指します。
商社・エネルギー事業
■2023年度 概況
エネルギー事業は、継続した次世代自動車への社会的シフトなどを背景に、燃料油販売数量は前年度並みとなり、売上高はほぼ前年と同水準を確保しました。また、カーリサイクル部門を分割し、ツネイシカムテックス株式会社へ事業譲渡を行いました。
■売上高:124億円(前年実績127億円、前年度比2%減)
■今後の展望
本カテゴリの事業については世界的な環境意識の高まりや消費者動向の変化に伴い、事業構造の転換を図るため、2024年1月に常石商事とツネイシCバリューズ、ツネイシキャピタルパートナーズを統合し、新たに常石商事株式会社として再スタートしました。
常石商事は商社とエネルギーの機能を担い、「鉄鋼・機械」「環境推進」「事業開発」「エネルギー」「モビリティ」の5つの領域で事業を展開します。特に「事業開発」においては、今後の社会変容を見据えた次世代の常石グループに必要となる新事業の創出に向けて取り組みます。そのため、積極的な事業投資のみならず、新たな発想を生み育むための人材採用、教育への投資を強化していきます。
ライフ&リゾート事業
■2023年度 概況
ライフ&リゾート事業は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行による経済活動の正常化や、インバウンド(訪日外国人旅行)需要の回復などを背景に、段階的に活気を取り戻しました。特に「せとうちの海に浮かぶ、ちいさな宿」として認知が広がるガンツウ事業では、旅行を控えられていた方々の新規予約とリピート予約が増え、高い稼働率を維持したことで、過去最高売上を計上しました。
●売上高:52億円(前年実績47億円、前年度比10%増)
■今後の展望
2024年3月に「ONOMICHI U2」が開業から10年を迎えました。地元の方々にも愛され、尾道の観光拠点として確固たるランドマークとなりました。今年は段階的に10周年イベントを開催し、これまでのご愛顧に対する感謝と新たなお客様の獲得に取り組みます。
引き続き「Setouchiを世界が選ぶ目的地へ」をスローガンに、インバウンド需要に応えるサービスレベルの向上、顧客満足を追求し、瀬戸内で得られる唯一の顧客体験を目指してまいります。
常石グループは、社員の幸せのために事業の安定と発展を追求し、 地域・社会とともに歩む企業として、持続可能な社会の実現に寄与してまいります。
― 本件に関するお問い合わせ先 ―
ツネイシホールディングス株式会社
広報部
pr@tsuneishi.com
TEL:084-987-4915